果てしなき渇き レビュー・感想
著者、深町 秋生のデビュー作。
そして完全に自分がやられた世界観。これで処女作だというの恐ろしいくらいの完成度。
分かりやすくハードボイルド・サスペンス・ノワールなのだが、とにかく暗くて濃い、そして後半に向けてのスピード感と日常→非日常への切り替えが秀逸。
日本人のハードボイルド・ノワール系作家では馳 星周が大好きなのだが、それに匹敵する面白さ。
内容としてはあらすじにあるように、失踪した娘の加奈子を追う元刑事で父親の藤島が主人公なのだが、嫌悪感を抱かせる彼の狂った愛憎がまったく共感できず、それが更に彼の狂気を生み出していて良い。
ストーリーが過去と現在をオーバーラップして進行していく。
数々の登場人物が登場し、徐々に娘の加奈子の考えていたこと、行動してたことが明るみになってくる。
過去も現在もどちらのパートも特徴的で続きが気になるサスペンス風の構成も読みやすい。
この誰もが幸せにならない物語、良いなぁ。
ちなみに映画版『渇き』を観たが、原作からすると相当残念な出来だった。
方向性を誤ったのか何故かタランティーノ風OPから始まるエンタメ系作品となってしまっていたため、原作の持ち味だった暗さや怖さ、エグみが取れてしまっていた。
未聴の方は期待しすぎないようにご注意を。