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ヒュウガ・ウイルス―五分後の世界 2

ヒュウガ・ウイルス―五分後の世界 2

ヒュウガ・ウイルス―五分後の世界 2 あらすじ

21世紀はこの小説で始まる。点状出血、内臓溶解、骨格筋の爆発的なケイレン。信じ難い致死率の出現ウイルスは何を象徴しているのか?ずれた時空の日本を襲う生存への最大の試練。世界人類が迎えた「最後の審判」を刻む衝撃のドキュメント。 点状出血、内臓溶解、骨格筋の爆発的なケイレン。信じ難い致死率の出現ウイルスは何を象徴しているのか。ずれた時空の日本を襲う生存への最大の試練。世界人類が迎えた「最期の審判」を刻む衝撃。「5分後の世界」続編。

ヒュウガ・ウイルス―五分後の世界 2 レビュー・感想

コロナウイルスでパンデミックな状況にこそ読んで欲しい作品

村上龍の傑作『五分後の世界』の続編ということで、読む前から楽しみ。
(『五分後の世界』は好き過ぎてまだレビュー書いていなかった…)。
一応共通の世界観でストーリーは進行しますが、主人公も場所も異なるので、ほぼ独立した作品として読むことが出来る。

『五分後の世界』の世界観としては、戦争後に数百万人まで人口が減り地下(文字通り山をくり抜き日本中に交通網を持った地下帝国)に潜った日本軍司令部(アンダーグラウンド=UG)、そして、連合国によって分割統治され日本人と移民による混血児たちが多数派を占めていて、混沌としたカオスな状況の日本という描写が多数出てきます。
無口で穏やかでありながら、知能・知識・身体能力がずば抜けていて、臨機応変に行動が出来るUGの兵士たちはちょっとしたスーパーマンのような理想的な人物たち。
この理想の人物像=現在の日本人がいか無知蒙昧で危機感がなく、生き残る術を持たないのか?を強烈に突き付けてきたのが前作という形になります。
凄い雑にまとめると近未来ディストピア系SF+軍事ものジャンルの金字塔とも言える作品です。

そして今回の2では未知のウイルスである「ヒュウガ・ウィルス」が発生し、そこにUGの兵士たち、連合国軍のCNN記者である米国人のコウリーと言う女性が同行して調査に向かうというストーリーです。
一般人であるコウリーは、圧倒的多数の敵軍をUG側の兵士がいとも簡単に殲滅をするのを目の当たりにし、恐れながらも興味を持って彼らUG兵士たちについていきます。

そして「ヒュウガ・ウィルス」の描写がくどいくらい具体的で恐ろしい。
ウィルスは旧四国のほぼ全域に蔓延しており、感染すると激しい筋肉収縮をおこします。
踊っているように見えることからロシアンマンボと呼ばれるこの症状で感染者は身体中の筋肉がでたらめに動き、骨折し、内蔵、皮膚等から出血をして死に至る病です。
フェイクニュースだったようですが「コロナウイルス」の影響と言われていた映像があります。
病院の患者たちや警備員の身体が痙攣して倒れるさまは、まさにこの「ヒュウガ・ウィルス」で感じた怖さそのもので、空恐ろしくなったのを覚えています。

まさにホラー映像さながらの阿鼻叫喚の患者たちの群れを潜り抜け、何とか治療方法を確立しようと旧四国の特A区まで向かいます。
そこで出会った盲目の少年は何故「ヒュウガ・ウィルス」の大感染の中、生き残っていたのか?

随所に医学用語やウイルスについての説明が多数あり、自分には正しい情報なのかどうか判断できない箇所も多かったです。
その辺りの知識があれば更に面白いのでしょうが…。
正直、お話としては一作目の『五分後の世界』の方が個人的にはインパクトがあり、前述の医学的な箇所が難解すぎる点もあるので、万人に向けて是非オススメ!と言える作品ではないとは思います。

ただ、現在の世界中で問題となっている「コロナウイルス」パンデミック騒ぎにもかなり通じる点があるとも言え、村上 龍の先見性と着眼点の鋭さに驚くばかり。
「いかに生き残るか」「いかに意思を持つか」。
今こそ読み直したい一冊です。

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