北の狩人〈上〉 レビュー・感想
『新宿鮫』でお馴染みのハードボイルド小説を得意とする著者の新シリーズ。
東北弁を話す謎の人物(梶 雪人)が歌舞伎町に現れ、ヤクザ相手にも物怖じもせず、むしろトラブルを呼び込むかのように新宿を歩き回り過去に潰れた組の事を尋ねていきます。
そんな謎めいたキャラクターの行動から始まるので、読者である自分も「何故そんな危ないことをするんだ?」「何が目的なんだ?」と続きが気になる形でストーリーが進行していきます。
太っちょで横柄な態度の新宿署の刑事・佐江が一応メインとなる主人公なのですが、同じ新宿が舞台ながらも、敢えて『新宿鮫』の主人公鮫島と対比させているかのよう。(…とは言え、見た目の造形だけで最終的な思想は微妙に似通ってきて「お堅い」印象を受けたのがちょっと残念。)
過去に何かあったであろうヤクザの幹部や、ぼったくりバーのキャッチをしていて最初は不良っぽかった杏等、北から来た雪人と絡む脇を固めるキャラ達も造詣がしっかりしていて安心して読める。